diary

博士の愛した数式 (小川洋子 新潮文庫)

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San Mateoの図書館で借りてきた本。借りた本はハードカバーでした。

最近、「xxが殺された! 犯人は誰だ?!」みたいな本ばっかり読んでていい加減飽き飽きしてたのもあって、すごくこういう本が読みたかったところでした。

内容は、事故で脳に障害を負ってしまって、80分しか記憶が持たないおじいさん(博士)と、その世話をすることになった家政婦さん、そしてその息子のお話です。とにかく描写がすごく丁寧でやわらかくて、物語の中で流れている時間がとても静かで穏やか。そして、厳しい運命を背負っているにもかかわらず、博士がものすごくいいひとなんだなぁこれが。この感じが、個人的にたまらなくツボです。

それから、博士は数学の専門家で、ストーリーの中で家政婦さんとその子供に対してごく初歩的な整数論を教えたり問いかけたりするのですが、これがまた本当に面白く書かれていて、すごく読んでてわくわくします。最初からこういう教え方をしたら、数学を嫌いになる子供なんていなくなると思うのに。

その時、生まれて初めて経験する、ある不思議な瞬間が訪れた。無残に踏み荒らされた砂漠に、一陣の風が吹き抜け、目の前に一本の真っさらな道が現われた。道の先には光がともり、私を導いていた。その中へ踏み込み、体を浸してみないではいられない気持ちにさせる光だった。今自分は、閃きという名の祝福を受けているのだわかった。

これは、博士から出された課題を家政婦さんが考えに考えて、ふとした拍子に正解を閃いた時のくだりです。とてもお気に入りの一節。教科は違うけど、私は物理に同じように感じを覚えて、大学は物理科に決めたのでこの感じよくわかります。とてもいい。

この本読んで思ったんだけど、理系、文系っていう線の引き方って、ちょっと乱暴な気がするんですよね。数学とか理論物理とかって、もっとこうなんというか、美術とか音楽とかと同じくくりのような気がする。理系だから、という線の引き方で、数学とか物理とかを食わず嫌いになるのはなんかちょっともったいないなぁと思いました。

ちょっぴり切ないけど、すごく気持ちが暖かくなる、とてもいい本です。機会があったらぜひ。既に映画にもなっているみたいですね。見てみたい気もするけど、この空気感がスクリーンに描ききれているのかがちょっと不安な気もします。

Written by Kei

April 3rd, 2012 at 9:07 pm

Posted in Book

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