• 風姿花伝: 140字で読む世阿弥のことば (世阿弥 X(エックス)

    風姿花伝 (ふうしかでん) は能の世阿弥が、弟子に向けて書いたと言われる秘伝の書です。「秘すれば花」や「初心わすれるべからず」などは、実はこの本からきてます。わかりやすい現代語訳のついた風姿花伝を読みたいと思っていて、探してたらAmazonで本書を見つけました。年末の休みに読みました。

    なんというか、言われてみれば当たり前、という内容が多かったのですが、それが600年以上前に書かれていたというのが驚きです。能に特化した内容が多かったのですが、それでも、一般的な心構えのようなものは、現代でも十分通じると思いました。以下、特に気になった部分を覚え書きも兼ねて引用しておきます。

    視野が狭く、頑固な成果、技術的に無理なのかわからないけど、自分の得意な芸ばかりやって、他のスタイルを学ぼうとしないのは間違い。

    下手な役者の長所を参考にすればいいのに、プライドが邪魔をしてそれができない。逆に、上手の欠点を見て反省材料にすれば、上達も早いはず。

    すべての芸を完璧にマスターできなくても、例えば、7,8割はマスターした役者が、その中で一番得意な芸を徹底的に工夫して、一つのメソッドとして確立できれば、全国区でも高い評価が得られるはず。

    能は全ての客に愛されるための芸だから、時と場合に応じでわかりやすい芸をすることも必要だし、それをやれるのが本物の名人。

    能の道を極めたあとに振り返ってみると「花」といっても特別ななにかがあるわけではないことがわかる。演技や演出をできる限り工夫し、観客を感動させるための論理を積み重ねていけば、自然と咲くものだよ。

    ちなみに、「初心わすれるべからず」は、一般的には「初めた頃の初々しい気持ち」と言う意味で使われがちですが、実は本来は、「初めた頃の拙さ」を指している、というのを初めて知りました。

  • 舟を編む (光文社文庫) 三浦しをん

    辞書を作る話。本屋大賞受賞作。ドラマやアニメ、漫画などのメディアミックスが大々的にあったらしいですが、読み終わってから知りました。

    個人的には、小学生、中学生のころはよく辞書を引いたものですが、それ以来、辞書を引く、という機会はほとんどありませんでした。特にネットが普及してからは、とりあえずググる、ということに慣れてしまい、辞書という選択肢すら出てこない感じでした。

    そんな状況だったこともあり、辞書を編むことがここまで緻密で、情熱的で、大変だ、というのは、考えてみれば当たり前なのですが、とても新鮮で面白かったです。特に、辞書を作ることを表現した以下の一文が心に残りました。

    たくさんの言葉を、可能なかぎり正確に集めることは、歪みの少ない鏡を手に入れることだ。歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差し出したとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる。一緒に鏡を覗きこんで、笑ったり泣いたり怒ったりできる。

    自分が次に辞書を引くとき、色々な感情が起こりそうで今から楽しみです。

    ちなみに、なぜ「舟」なのかというと、作ろうとしている辞書の名前が「大渡海」で、この辞書が「言葉の海を渡る舟」となぞらえているからです。結構好き。

  • さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち (イースト・プレス) 小坂康之, 林公代 

    散歩するときにたまに聞くラジオの一つに「ゆる天文学ラジオ」というのがあるのですが、そのエピソードの一つで紹介されていた本。気になってKindleで読みました。

    JAXAで認可されている宇宙日本食のレパートリーの中に、高校生が作っているサバ缶があるのですが、それがどのようにして採用されたか、という話。着想から14年かけて、紆余曲折ありながらも最終的に宇宙飛行士の野口さんが国際宇宙ステーションでそのサバ缶の食レポをするまでに至る過程が綴られています。

    先生がこうしろああしろ、というのではなく、プロジェクトがすべて生徒の自主性でドライブされていたというのが何より素晴らしかった。支える先生は、さぞもどかしかったり辛かったりしただろうと思うと頭が下がります。

    とても面白かった。面白かったのだけど、ラジオでの紹介がすばらしすぎて、ラジオを聞いたときのほうが感動が大きかったというのが正直なところでした。

  • 陰翳礼讃 (青空文庫) 谷崎潤一郎

    有名な本。読みは「いんえいらいさん」です。前から気になってて読みたいなと思ってました。青空文庫で無料で読めます。

    陰影を徹底的に排除しようとする西洋文化とは対象的に、東洋、日本の文化や芸術は、そもそも陰翳を認め、それを利用することで、その陰翳の中で映えるものを作り上げてきたという話。そして西洋文化を取り入れることで、その良さが損なわれてしまい、「損」をしているという話でした。

    さすがにあれほど趣のあるトイレは体験したことはないけど、その他の部分に関しては多かれ少なかれ身に覚えがあって、共感できる部分が多かったです。三十三間堂とか古い寺とかで感じる、あのえも言われぬ感じの正体がわかった気がしました。

    他にも、今の時代だったら物議を醸しそうな表現があって攻めてるな〜と思ったり、螺鈿細工の漆器がちょっと欲しくなったり、柿の葉寿司が食べたくなったりと、色々感じるところが多かったです。

    それから、話題はもちろん面白かったんだけど、それよりも、こういうのを言語化して伝えることができるがすごいなぁって思いました。あと、やっぱり、言葉とか表現とかに味がありますよねぇ。いいなと思ったのをいくつか覚え書きまでに残しておきます。

    畳の上に幾すじもの小川が流れ、池水が湛えられている如く、一つの灯影を此処彼処に捉えて、細く、かそけく、ちら/\と伝えながら、夜そのものに蒔絵をしたような綾を織り出す。

    ちょうど私がその部屋へ這入って行った時、眉を落して鉄漿を附けている年増の仲居が、大きな衝立の前に燭台を据えて畏まっていたが、畳二畳ばかりの明るい世界を限っているその衝立の後方には、天井から落ちかゝりそうな、高い、濃い、たゞ一と色の闇が垂れていて、覚束ない蝋燭の灯がその厚みを穿つことが出来ずに、黒い壁に行き当ったように撥ね返されているのであった。

  • 神様の定食屋 (双葉文庫) 中村 颯希

    日本に行くときの飛行機で読もうと思って、Amazon Unlimitedにあった面白そうな本から選びました。

    両親を事故で失った主人公が妹と定食屋を継ぐことになったんだけど、自分は全然料理できなくて神社で神頼みしてたら、神様が現れて料理の得意な故人を憑依させてくれる、という話。料理や味の描写が、わかりやすいというか、ダイレクトに「あぁ、うまそうだなぁ」という気持ちにさせてくれて、日本行きの飛行機でテンションあがりました。

  • 最近続きが気になるマンガ – 2025

    続きが気になるマンガ、の初回を書いたのが2021年。そろそろ、アップデートしておこうかな、と思った次第です。最近、読む冊数が減ったな〜。

    ルリドラゴン
    最近読んだ中ではダントツに好き。作者がしばらく休載してたようですが、連載が再開されたようです。続き早く見たいです。

    葬送のフリーレン
    勇者のパーティの後日談。前回もリストしましたが、その後TVアニメは覇権になり大人気になりました。エンデ、たどり着くのかな…

    フラジャイル
    病理のお医者さんの話。前回もリストしましたが、その後も単行本1-2冊ごとにトピックが変わり、次の展開が待ち遠しいです。

    ダンジョンの中の人
    ダンジョンの管理側のお仕事をすることになった女性冒険者の話。絵はシンプルだけど、話が面白い。

    とんがり帽子のアトリエ
    魔法使いを志す女の子の話。とにかく絵が緻密で素敵。熱血なストーリーもよい。

    前回リストされてたあの作品たちは…?

    ベルセルク
    なんと、作者の三浦建太郎さんが大動脈瘤解離で急逝されました。今は、ホーリーランドの森恒二が三浦さんのスタッフとともに続きを書いています。

    よふかしのうた
    完結しました。ナズナちゃんは最後までどうにもこうにもかわいった。

    宝石の国
    完結しました。まだ実は最後まで読めていません。この正月休みにでも読んでみよう。

  • 告白 (双葉文庫) 湊かなえ

    前々から評判が良くて気になってた作品。Kindleに買ったままになってたので、正月の休みに読んでみました。

    我が子が校内で亡くなってしまった中学校の女性教師によるホームルームでの告白から始まる話。いくつかの章に分かれていて、それぞれの視点からのこの事件の動機や背景、そして事件とその後の話が語られます。一つの事件の裏にはいろんなストーリーがあって、そういうのが絡み合ってこの事件が起きたというその解き明かされ感が面白いのと、あと、最後がたまげました。これは評判通りの面白さでした。

  • 逆ソクラテス (集英社文庫) 伊坂 幸太郎

    なんかで面白いと噂を聞いて読んでみました。ちょっと前に読んでたんだけど、記録するの忘れてました。

    小学生目線の短編が5つ詰まってます。小学生の頃、こんなませた考え方してたかな〜とちょっと思いもしたけど、話はどれも読後に爽快感があって面白かったです。

  • エンドロール (ハヤカワ文庫JA) 鏑木 蓮

    ひろこ姉さんにお勧めされて借りて読んだ本。

    マンションでの老人の孤独死を発見した主人公が、その老人が残した謎のノートと8ミリのフィルムに興味を持ち、彼の生前の軌跡を追っかけていく話。こんなに色々都合よく行くかなー?とも思わなくもないけど、謎のほどけていく感じがとても気持ちがいいというか、あぁ、なるほどねぇ、という感じでした。当の老人は生きている状態ではまったく出てこないのですが、でも、彼が何を思い、どう生きてきたのかがとてもよくわかり、手法として面白いなと思いました。

    ひろこ姉さんはこの鏑木さんという作家さんのファンのようで、他の本もよかったら持ってって読んでいいよとのことでした。あとで、蔵書を見てみようと思います。

  • 外科医、島へ 泣くな研修医6 (幻冬舎文庫) 中山祐次郎

    日本に行く飛行機で読もーっと、と思ってちょっと前に買っておいた本。予定通り日本行きの機内で読みました。Kindleで購入。

    今回は主人公が離島に勤務する話。お医者さんは文字通りどんな病気や怪我も診ないといけないこと、都会にいたら助かる命も助からないこともあるということ、それも込みで離島に住むことを選択する、ということ、など、離島の医療状況や生活なんかがよくわかってとても興味深かったです。いつもどおり医療の話はとてもリアルでよかったのですが、高度な治療をわかりやすく解説してくれるあの感じは今回はお預けでした。